あの未来に続く為だけの、それだけの人生だ。

悲観と懺悔溢れる 幻想の埒外の辺境地

私の歩いてきた道

 

 

言われるがままに

「早く何でもいいから正社員になれ」

「苦労は買ってでもしろ」

「仕事を選ぶな」

「非正規なんて人には言えない」

「いつまで遊んでる気だ」

 

20代前半、景気最悪の中、がむしゃらに自分の個性も気持ちも押し殺して就職活動をした。

 

当時の周りの“大人”達に上記のことを言われ続けた。無知な私はそれが「社会人」と言うものだと思い込まされていた。

 

結果、入社した会社は倒産した。ある会社は職務内容を偽っていた。ある会社は包み隠さず隷属を強要した。

 

残ったのは中途半端な経験と積み重ねた職歴。およそ良い評価のされない低スペックな社会人になった自分だった。

 

そんな自分にかけられた言葉。

 

「そんな会社を選んだあなたが悪い」

「将来をちゃんと考えているのか」

「もっと危機感を持てよ」

「次はいい所に当たるよ」

「時代が悪い」

 

私に“社会人”とは何たるかを語り、就職を急かした“大人”達は跡形もなく消えていた。私は誰の話を聞いていたのだろう?

別の大人も同じことを語る。実践する、消える。

私は何がしたいんだろう?したかったんだろう?

 

幾度も殺し続けた私の個性や本当の気持ちに問いかけたくても、もう心の何処にあるのか、存在しているかも解らなくなっていた。

 

「普通」とは

私は変わり者、変人だった。こだわりが強く頑固、体験主義で興味に対して労力を惜しまず、誰かに話さないと気がすまない、他人の評価も気にしない、常識をまず疑ってかかる自己中心的な性格だった。

 

つくづく和を乱す性格だ。組織には向いていない。

しかし社会人になる為に押し殺した。変わり者では周りと話が噛み合わない。みんなと同じ「普通」になる為だ。

本来の性分を押さえ込むのは簡単ではない。殺して殺して殺し続けた。

 

「普通」にはなれた。でも中身を失くした。

変わり者ではなくなった。しかし何者でもなくなった。

 

個性も自己主張も無く、ただ「普通」を演じる為、自分を殺し続ける日々。ふとした油断で元来の変わり者の意見をすれば異端視され、理解できないと否定される。

 

性格も月日を経れば変わるもの。私は自分の本当の気持ちを他者に話す事が出来なくなっていた。

 

他人の意見と食い違わないように、機嫌を損ねないように、そのためなら自分をまず犠牲にする。自我など微塵もない、

周りが望んだであろう従僕。

 

しかしなぜだろう。周りからまた、異端の目を向けられた。

 

「お前は意見がないのか」

「何を考えているか解らない」

「隠し事をしているんじゃないか」

「あなたを理解できない」

 

変わり者から偽りの普通へ。確かに変わった。無理やり変えた。

しかしどれだけ変わっても周りには

 

認められなかった。

 

変わり者が若い頃、鼻で笑ってぞんざいに扱った「普通・常識」

それを遅れて求め目指したとしても、それは他者に対しては周回遅れの「普通」。全力程度では埋められない距離がある。それを偽りで埋めても所詮付け焼き刃、ボロが出る。

 

それに気づかず殺され尽くした“自分”にもはや自ら肯定できる性分も個性も残っていない。

 

そして現在、世間の“普通”で考えて、年齢的にも変わり者では憐憫の対象となった私は未だに「変わり者」を殺すことで「普通」を保っている。

 

 

つづく