あの未来に続く為だけの、それだけの人生だ。

悲観と懺悔溢れる 幻想の埒外の辺境地

変わり者、ジレンマ、成れの果て②

 

僕は「変わり者」になった。しかし個性は無い。具体的にどんな所が「変わり者」だったかって?

単に周りがやらないことでウケがいい事をやっただけだ。それ以外は特に考えてなかった。

 

しかし習慣というものは恐いものだ。演じていただけのはずだった「変わり者」の自分を、まるで生まれた時から備わっている個性と勘違いしてしまうのだから。

 

高校生活も慣れてきた頃、僕はアルバイトを始めた。職場には僕の過去を知る人はいない。かりそめの僕の個性は、何故かすんなりその環境に溶け込めた。同年代の人達と仲が良くなるのにも苦労しなかった。

仕事も周りより出来たようで重宝された。

自分は学校より仕事の方が必要とされている。同期の奴らより仕事が出来るし、「変わり者」だからか目上の人からの評判もいい。

僕はアルバイトを次の「居場所」にした。

 

今思い返せば、仕事では「変わり者」といっても遅刻欠勤や自分勝手な振る舞いをするのでは無く、変わったことをするために仕事に関する本を読んだり、効率化に行動力が発揮されており、周りからは言動は変だが勉強熱心なアルバイトという評価だったと思う。

 

そうして月日は流れ、高校を卒業する。

その頃には過去の醜く壊れた、人じゃない何かの僕の面影は無く、多少のアトピーは残っていたが、周りから頼られる事もあるくらいの一人前の人になっていた。

 

卒業後の進路は家庭環境の事情と無知もあって、大学には行かず就職する事にした。

 

選んだ職種は販売職、しかもアパレル業界だ。

その動機は、当時は確かに服は好きだったが、本音は過去に僕を見捨て、差別した奴らに対して社会的に先手を打って、今度は僕がお前らを蔑んでやるという復讐心だったと思う。

 

僕は必死に頑張った。知り合いが成人式がどうこう言ってるのなんて雑音でしかなかった。当然出席せずに仕事だ。

頑張りが認められてエリアの最年少店長になった。全国でただ一人の特別賞与を貰ったりした。

アルバイト時代の「変わり者」の行動力がそのまま発揮され、今でいうPDCAを自然と回せていたんだと思う。資格も取ったりした。

 

同年代で僕は一番になった。学校時代の知り合いで誰も僕には文句を言わない。言ってくるのは嫌味、妬みばかり。ざまあみろと思った。お前らの何百倍の嫌味、妬みを僕はアトピーで苦しんでいた頃、抱えていたんだ。

 

その成功体験の積み重ねが僕の中の「変わり者」の価値観にさらに磨きをかけていった。

 

そしてそれは自惚れへと変わる。

 

会社からも職場からも期待され、これからという時に僕は、他の仕事でも自分の力を試したいと日に日に思いを募らせていた。

 

そして思いが行動に変わった時、僕の人生は狂い始めた。